鳥居枕作詞 滝廉太郎作曲 「箱根八里 」

 「花」の項で述べてように、この曲は「中学唱歌」の編集が行われた時に応募して入選した作品ですが、当時、東京音楽学校の国語科教授だった鳥居枕が作曲課題として出したこの詩の曲づけが、とても難解だということで先輩作曲家たちが尻込みした中で、滝廉太郎が見事な曲を作曲をし、一同に舌を巻かせたと伝えられています。
     

第一章

●天下の険:どこにもないような険しい山岳地帯こと。 
●函谷関: 故事や『三国志』の舞台として有名な関所跡. 河南省北西部、長安(西安)と洛 陽の間を結ぶ要路にある関所跡。西には三門峡があり、地形上からみても戦略の重要なポ イントして機能していた天然の要害
●万丈(ばんじょう)の山:一丈の一万倍で、昔は非常に高いという表現に使った。 
●千仞(せんじん)の谷:仞(じん)は周の時代の深さ、高さの単位で一仞は中国周代の八尺(一尺は22.5cm)なので、これの千倍という厳しい渓谷を表わしている。
●羊腸(ようちょう)の小径(しょうけい):羊の腸のように細く、くねくねと曲がった長い小道のこ と。
●一夫関(いっぷかん)に当るや:第二章にある蜀(しょく)の桟道(さんどう)の険阻(山などのけわしいこと)であることの例えに使った言葉で、 堅固な要害(地形が厳しく敵を迎え撃つのに都合がよい場所)のこと。

第二章(一章と重複するものは省略)   

●天下の阻(そ):通行を阻むどこにもないような場所 
●蜀(しょく)の桟道(さんどう):絶壁などの棚のように設けた道のこと。

 この歌の魅力は勇ましさや迫力といたものにあり、当時の気質を考えると特に男子の青春歌として謳歌されたことは間違いないと思われますが、昭和17年の4月にNHKラジオの「国民合唱」 で二部合唱で放送されたこと、戦後、中学校の音楽教科書でも長期間指導されてきた曲なので、今でも愛好者の方はたくさんおられると思います。ここで改めて歌詞の意味も考えて歌っていただけるように、拙い解説を入れておきました。

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