竹島羽衣 作詞 滝廉太郎 作曲 「 花 」
        《 現代語で書いて見ると 》

1)春のうららかな隅田川に、

  上り下りの行き交う船人があり、

  船を漕ぐ櫂のしずくが花びらのように散っている。

  この眺めを何にたとえたらよいであろうか。

2)見でごらん、夜明けの露を浴びて、

  私に何か語りかけてくるような桜の木を。

  見てごらん、夕暮れ時に手を差し出して、

  私を呼んでいるような青い柳の木を。

3) 桜や柳の美しい模様の長い土手に、

  日暮れになると淡い色の月が昇ってくる。

  この時の光景はほんとうにすばらしい。

  この眺めを何に例えたらよいのだろうか。

 この曲は明治33年、作曲者滝廉太郎が21才の時に出版されたもので、組歌歌曲「四季」の春の部にあたります。他に夏ー「納涼」、秋ー「月」、冬ー「雪」の4曲からなり、独唱、二重唱、混声合唱の演奏形態で構成されており、独立した演奏会用の歌曲としては日本最初の作品ですが、特にこの「花」は今でも中学校の音楽教科書に登場している不朽の名曲です。
 滝 廉太郎(1879〜1903)は東京に生まれ、父の任地大分県竹田市で成長し、明治31年に東京音楽学校を卒業し、同校勤務のままドイツに留学、病を得て帰国、23才11ヶ月で没しました。明治34年に東京音楽学校で、中学生の唱歌教科書「中学唱歌」 を作成するため、課題詩を出して作曲を募集した時に、滝 廉太郎は「荒城の月」、「箱根八里」、「豊大公」の3編を提出し、3編とも入選しました。
 作詞の竹島羽衣(1872〜1967)は、当時、東京音楽学校の国語科教授であり、その後東京女子高等師範学校にも勤めました。
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