高野辰之 作詞 岡野貞一 作曲 「 春が来た 」

 これほど簡潔明快で、大らかに春が来た喜びを歌い上げた歌はないと、誰もが絶賛する唱歌で、忘れがたい子どもの頃の心の歌であり、今日まで絶えることことなく、小学校教科書に掲載されてきた。作詞の高野辰之と作曲の岡野貞一が同時期に東京音楽学校に勤めることがなたっかたら、決して生れることはなかった唱歌の名作といえるものである。

 高野辰之(たかの たつゆき)(明治9年〜昭和22年)    

 国文学者、 長野師範学校卒業後地元の小学校教師、東京に出て下級官吏  を勤めながら苦学の末、東京音楽学校教授に就任、後に文学博 士号を取得する。専門の国文学の他に邦楽や日本の演劇の研究 でも大きな業績を残しているが、同時代に東京音楽学校の作曲科に在籍していた岡野貞一とのコンビによる唱歌の優れた作詞で名を残した。        

              <高野辰之と岡野貞一による主な唱歌>                            
       ふるさと、春がきた、春の小川  もみじ、朧月夜、日の丸の歌 など 


 岡野貞一(おかの ていいち)(明治11年〜昭和16年)

 作曲家、鳥取市生れ、子どもの頃教会でオルガンの演奏に惹かれて音楽をはじめ、牧師に音楽の才能を見出されて上京し、東京音楽学校に進学。明治33年卒業と同時に同校に留まり、昭 和7年教授を退官するまで日本の音楽教育発展と後進の育成に尽力した。この学校の在職中に文部省の唱歌編集・作曲委員に任命され「尋常小学唱歌」 の編纂に携わった。小学唱歌の名曲は同時期に東京音楽学校で文学の教鞭を執り歌詞を担当した高野辰之とのコンビで生れたものが多いといっても差し支えないほどである。               

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