杉村楚人冠作詞 舟橋栄吉作曲 「 牧場の朝 」

 昭和7年に発表された「新訂尋常小学唱歌」の中では最も人気のあった唱歌といわれ、爽やかなメロディーに抜群のピアノ伴奏がけられていて、この歌を喜んで歌う当時の小学生の生き生きとした姿が想像できるような気がしますが、戦前にピアノが学校にあって、この伴奏楽譜がきちっと弾ける先生がおられた小学校は稀でしたので、大半はオルガンの伴奏で、私の場合には伴奏はきちんとしたものではなく、メロディーだけ弾いてもらって歌っていたと思いますが、それでも楽しかった唱歌の時間のことを覚えています。この曲をきちんとしたピアノ伴奏に合わせて歌えるようになったのは戦後7年くらいを経過してからだったと思います。

 

 杉村楚人冠(1872〜1945)本名、広太郎 新聞記者

 イギリスの法律学校、先進学院等で法律を学び、東京のアメリカ公使館に入り、その後、明治36年に東京朝日新聞社に入社して記者になる。日露戦争に際し、トルストイの「日露戦争論」 を逸早く全訳掲載したり、 東北地方の凶作状況の視察報告等を書いて認められ、大正に入ってからは朝日新聞を代表して国際的に活躍した。彼の随筆は有名で「へちまの皮」、「うるさき人々」その他数編の著書がある。この曲の作詞者は分かっていなかったが、作曲者船橋栄吉氏の息女・豊子さんの手記に、朝日新聞社の杉村楚人冠が、明治43年に岩瀬牧場(福島県岩瀬郡鏡石町)へ取材に訪れた際に、この詩を作ったことが書かれていて分かった。

 船橋栄吉(1899〜1932) 声楽家・作曲家

 東京音楽学校声楽科卒業、ベルリン国立音楽院にも学び、その後東京音楽学校の教授もつとめた。大正13年のベートーベンの第九交響曲の日本初演に出演。文部省音楽視学委員 もつとめた。作曲に浜田広介の詞による「浮草」と「父と子」などがある。

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