吉丸一昌 作詞 中田 章 作曲 「 早春賦 」

 この曲は歌詞の良さメロディーの美しさから、発表後、特に女子学生を中心に喜んで受け入れられ、全国的に広まっていったと伝えられているが、現在でも多くの人々に愛唱されている名曲であり、今も中学校の音楽教科書に掲載されている。金田一春彦氏に言わせると、第一に歌詞がよく、本格的な春の訪れを待ちわびる人々の気持ちがよく現れており、吉丸一昌の作品の中では「浦のあけくれ」と双璧をなす傑作だということだが、曲もこの詩に応えて闊達でのびのびと歌いやすく出来ており、よく歌詞にマッチしているということである。又、この歌の曲についてはモーツァルトの「5月の歌」の影響を受けているという説があるが、このことについては、次に、この曲を添付しておくので、音で確かめてみていただきたい。→(クリック)

 吉丸一昌(1873〜1916)については「浦のあけくれ」のところで既に述べているが、吉丸は大分県臼杵の出身で、熊本の第五高等学校へ進学し、ここにいた夏目漱石、小泉八雲 、湯原元一(後に東京音楽学学校校長となる)等の影響を受けて文学を志し、東京大学文学部を卒業後、前述の湯原元一に東京音楽学校教授に抜擢されて 、この学校で文学の講義を行う傍ら文部省の唱歌編纂委員の作詞の主任として活躍、唱歌を新しくした「新作唱歌」全十集を発表し、その後の童謡運動等の先駆となった。

 中田 章(なかた あきら:1886〜1931) オルガン奏者

 東京生まれ。明治40年東京音楽学校卒業。同42年同校研究科を卒業。その後同校 教授を務めた。著書に「オルガン教科書」、「基本和声前編」があり、作曲には、このほかに「蛍狩」があるが、なんといっても「 早春賦」の作曲者として知られている。作曲家中田喜直の父。

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