16) 北原白秋作詞・中山晋平作曲「あめふり」
  童謡「あめふり」の歌詞は未完童謡集「赤いブイ」に収録されていたものですが、大正14年(1925)11月発行の雑誌「コドモノクニ」で中山晋平の作曲による楽譜付で発表さ されてから一般に広く歌われるようになしました。 この歌詞では子どもが雨降りを素直に楽しんでいる様子が描かれていますが、子どもは雨自体が楽しいのではなく、母さんのお迎えが楽しいのです。「ピッチ ピッチチャップ チャップ ラン ラン ラン。」と、軽快に弾むようなリズムに乗せて、母さんのお迎えを喜ぶ子どもの気もちが見事に描き出されています。 白秋は子どもの童心を研究するために日本全国の膨大な「わらべ歌」を集めて研究していますが、子どもの心を掴む言葉遊びの表現は実に生き生きとしたものです。この歌詞に曲を付けた中山晋平も与えられた歌詞に合いの手を加えたり、言葉遊びの語句をつけ足して作曲することが得意だったことから、二人が意気投合してこの童謡が生まれた訳です。
  しかし、北原白秋の育った柳川の家は、江戸時代から続く海産物問屋兼造り酒屋で、母 親は多忙を極めていたことから、小学校の頃の雨降りの日に、母さんが傘を持って学校まで迎えに来るというようなことはなかったと思われることから、これは白秋の子どもの頃の願望を描いた詩と考えられます。