本用語集は、私が自分の知識を整理する目的で作成しています。間違っている箇所が多々あると思いますので、内容にあまり責任が持てません。間違いを教えていただければ幸いに思います

更新履歴
04/1/21リボザイム、BLASTを追加

[あ]

アンチセンス法

タンパク合成を指示するm-RNAと相補的な配列を持つRNAをアンチセンスRNAと呼ぶ。細胞中にこれを導入すると、標的とするm-RNAとハイブリダイズするので、特定のタンパクの合成を抑えられる。
アンチセンスとRNAiの違い:
RNAiは少量で効果を出すのに対してアンチセンスRNAは標的に対して大量に必要となります。また、従来のアンチセンス法ではオリゴ合成にコントロールのオリゴも含めるためにかなり費用がかかります。また、遺伝子抑制に確実な効果が現われにくく、ターゲットとする箇所の設定にも時間がかかります。アンチセンス効果を維持するために、何度も合成オリゴを添加しなければならない事もおこるので不経済になってしまいます。

エドマン法(エドマン分解)

たんぱく質のアミノ酸を順に切断する方法。タンパク質やペプチドのN末端にフェニルイソチオシアネート( PITC )をカップリングさせる。得られたPTCペプチドに、トリフルオロ酢酸のガスを吹き付け、N 末端ペプチド結合を特異的に切断する。ここで遊離してきたN 末端アミノ酸であるアニリノチアゾリノン( ATZ )誘導体は、安定なフェニルチオヒダントイン( PTH )アミノ酸誘導体に転換する。このPTHアミノ酸誘導体を高速液体クロマトグラフィー( HPLC )で同定する。プロテインシーケンサはこの方法を自動化したもの。
ただし、この方法は正確に読めない場合があり、現在では、アミノ酸配列全て決定するのではなく、一部を決定した後、それをもとにコドン表からコードする遺伝子(正確にはmRNA)の配列を推定し、それらの配列を持つmRNAを選びだした後、それが本当に目的のmRNAかどうか調べ、もしそうだったらその塩基配列を決定し、それからアミノ酸配列の全容を決定する方法が一般的

オリゴDNA

20塩基程度の長さのDNA。特定の塩基配列に特異的にハイブリダイズする最小の長さと考えられ、DNA増幅の際のプライマーや、DNAチップに固定するDNAとして用いられる。


[か]

気相シーケンサ

エドマン法を自動化したプロテインシーケンサ

共焦点光学系

被写体に対して、光源と受光素子が共役ない置換形にある光学系。通常の光学系と異なり、焦点方向の分解能が高く、焦点から外れたものは見えない。1分子蛍光法、レーザ顕微鏡などで利用される


[さ]

サザンブロット〜Southern Blot

二次元電気泳動したDNA/RNAを、ゲルに重ねたニトロセルロース膜に転写し、膜上でRIでラベル化したDNA/RNAプローブとハイブリダイズを行いフィルムを感光させることで、塩基配列を特定する方法。ゲルを切り出し抽出などの手間がかからない

サンガー法

DNA配列を決定する方法。DNA複製の際に、原料として、通常のデオキシAGCT塩基のほかに、ダイデオキシAGCTを混ぜておくと、ポリメラーゼによる複製反応の途中で、デオキシ塩基またはダイデオキシ塩基が結合するが、たまたまダイデオキシ塩基が結合するとそこで複製反応は停止する。つまり、複製反応はどこかランダムな位置で停止する。すなわち複製が終わると、塩基数が1個、2個...全体、という、あらゆる長さのDNAが生成する。これを電気泳動で分離すると、長さが短いDNAから溶出するので、出てくる順に端の塩基を読めば、結果として順に塩基配列を読んだことになる。  端の塩基を読むのは、たとえばダイデオキシAを加えておけば、ずべてのAで終わる部分で複製が停止するので、Aの位置がわかり、同じDNAに対して、G,C,Tも読めば、G,C,Tで終わる位置がわかるのでその結果を総合すれば配列が決定できる。現在では、ダイデオキシA,G,C,Tそれぞれを異なる波長で発光する蛍光物質を結合したものを加え、4波長同時検出をすることで、1回の泳動で完全なシーケンスを読むことができる。  DNAの複製は、現在ではPCRを用いる。ただし、2本鎖同時増幅の場合はPCRは温度サイクル数に対して指数関数的に増幅されるが、サンガー法の場合は鋳型DNA鎖は増幅されないので、サイクル数に対して線形に増幅される。なお、サンガー法が開発された当時はまだPCRがなかったので、大腸菌でDNAを増幅させた上でこれを1本鎖にして、これに対してダイデオキシAGCTを加えて複製反応を行っていた。  現在のDNAシーケンサでは、一度に600〜700塩基程度を読み取ることができる(これを越えると、電気泳動のピークがなまり、1塩基単位での読み取りが困難になる)。また、同じ塩基配列のパターンが繰り返されるなど、特定のパターンの場合は、複製の鋳型となる1本鎖が自己結合を起こしやすくなり、正しく複製されない結果、読み取りミスが生じやすい。

消化、酵素消化

タンパクに消化酵素を加えると、特定の位置で切断されるので、構造解析に役立つ。ペプチドマスフィンガープリント法の前処理で使用される

ジニトロフェニル法

タンパクのN-末端決定法。サンガーが1945年に開発

親和性プローブ法

タンパクの全体もしくは、重要な結合ドメインを持つ部分を取り出し、そこに何がくっつくか調べる方法

制限酵素

DNA鎖を、特定の塩基配列のところを認識して選択的に切断する酵素。もともと、細菌の細胞が、ウィルスなどが侵入したときに侵入DNAを切断して無害化するために作っているもので、制限酵素は、それを作っている細菌の名前で呼ばれる。

[た]

糖鎖

タンパクは、それ自体で機能するものもあるが、多くのタンパクは、糖鎖がくっついた糖タンパクの形で機能する(翻訳後修飾の一種)。糖鎖はグルコースなどの糖が鎖状につながった構造をしている(分岐もある)。糖鎖は生体が病原菌などの異物を見つけて攻撃する目印となり、ウイルス感染時の免疫反応や臓器移植時の拒絶反応などに関係する。ABO式など様々な血液型分類を決めているのも糖鎖である。
糖鎖の働きは、(1)タンパク質の種類を示す、(2)タンパク同士を結合する、(3)ホルモンなどを検知する、(4)タンパクが分解されないように保護する、(5)細胞の種類を見分ける標識

トランスクリプトーム

遺伝子全体を現す「ゲノム」に対して、実際にm-RNAに転写されタンパクの合成に関与していると思われる遺伝子のセットを現す。代表的な方法は、現在発現中のm-RNAをDNAチップ(DNAマイクロアレイ)で検出する方法である。  たとえば、細胞の分化の過程でどの遺伝子が発現しているか、を調べるなどの用途がある。


[な]

2次元電気泳動

たんぱく質の混合物を分離しパターンとして可視化する方法。まず、等電点電気泳動でpHごとに分離し、つぎに、分離した各pHのタンパクを、それと垂直方向にポリアクリルアミド電気泳動(DSD-PAGE)させ、2次元に展開する。  泳動はゲルの密度や温度に依存して再現性が悪いので、高精度を要する場合は、既知のタンパクを内部標準物質として添加して泳動の再現性を補正する。  膜タンパクなど、溶媒に溶解しにくいタンパクは適用しにくい。


[は]

ヒトゲノム計画

人間の遺伝子の塩基配列を全て読み取る計画。ワトソン博士の呼びかけで始まった米国を中心とする国際チームと、ベンチャー企業セレラ社により別個に進められ、2003年に完了した。使われた遺伝子は東大の学生のものだったり、セレラ社の社長のベンター博士のものだったりしたらしい。現在、この成果を使って、コンピュータ上で、様々な遺伝形質、遺伝病などに関係する遺伝子が発見されている。

表面プラズモン共鳴センサ

センサに固定したリガンドの前をタンパクなどの物質が通過する際に相互作用があると出力が高感度で変化することを利用した、分子間相互作用検出方法

プライマー

プライマーとは、酵素的DNA合成の開始に必要な鋳型DNAに相補的塩基配列をもつDNA鎖、またはRNA鎖。オリゴDNAが用いられる。

ペプチドマスフィンガープリント法

タンパクをトリプシンなどの消化酵素でいくつかの断片に切断し、この断片の分子量をMSで測定して得られるプロファイルから、タンパクを同定する

ポリメラーゼ連鎖反応

"DNA増幅法。DNAを加熱すると2本鎖が1本鎖に開裂する。これを冷却して、DNAの原料であるA,G,C,Tの塩基とDNAポリメラーゼ酵素を加えると、各1本鎖は、相補的に塩基が結合して2本鎖になる。これをまた加熱して開裂させ、この温度サイクルを繰り返すことで、温度サイクル数に対して指数関数的にDNAが増幅される。キャリー・マリスがデート中に発見した方法。  この方法が開発されるまでは、DNAの増幅は大腸菌に組み込む方法が用いられていたので、バイオハザードにするなどの注意が必要だったが、この方法で、高速に無生物的にDNAを増幅できるようになったので、DNA配列決定などの分子生物学が飛躍的に進んだ。"
ポリメラーゼを活性化させるために、マグネシウムを入れるらしい(入れすぎると目的外のバンドがたくさんできる)

翻訳

RNA配列を読み出してアミノ酸が配列されること

翻訳後修飾

翻訳によってできたたんぱく質に、その後、別の物質が結合すること。これによりタンパク質の機能が制御される。


[ま]

[や]

[ら]

リガンド

(タンパク等と)相互作用するあらゆる物質

リボザイム

触媒機能を持つRNA一般を指し、狭義にはRNAを部分特異的に切断するRNA分子のこと。


[わ]

[数字]

2ハイブリッド法,酵母2ハイブリッド法

酵母の転写因子の働きを利用、細胞内でしたたんぱく質相互作用の有無を調べる手法。相互作用を調べたい2つのタンパクが結合すると転写因子が構成され、それによってレポータ遺伝子が活性化し、ある形質が発現する。相互作用がない場合は転写因子が構成されないため形質の発現がおこらないため、発現状況を調べることで相互作用の有無が判定できる。


[英字]

BLAST

相同性(ホモロジー)検索の実装の1つ。NCBI(National Center for Biotechnology Information)で開発された

ICAT法

正常組織と異常組織のプロテオームを定量的に比較する方法。両者のサンプルを抽出、分画、粗精製操作を行い、システイン残基をビオチン化する。このとき、どちらかのサンプルのビオチンタグを同位体標識する。このあと両者を混合し、消化したあと、アピジンにより、ビオチン化されたものを選択し、LCMS/MS分析を行うと、正常組織と異常組織の各MSピークが、ビオチンタグにつけた同位体の質量数差だけずれて並ぶ。両者の各成分ピークごとのMS強度比をとると、正常組織と異常組織で異なっているピークのみ比が異なるので、両組織のプロテオームの差が定量的に比較できる。

IPG

固定化pH勾配ゲル。2次元電気泳動の1次元目の分離に使用する。pH勾配をゲルストリップ上に固定化してあるため、安定した分離ができる。

in vitoro virus法

分子間相互作用を起こすたんぱく質に対応するDNA塩基配列を調べる方法。cDNAを翻訳する際、mRNAを結合したタンパク質群から相互作用をするものを分離し、そのmRNAをRT-PCR反応で増幅して配列解析する。存在量の少ないタンパクのmRNAも増幅・解析が可能。

PCR

→ポリメラーゼ連鎖反応

RNAi(RNA干渉)

特定のRNAの発現を抑える手法。よく似た手法にアンチセンスRNAを使う方法があるが、RNAiの場合は、アンチセンスと異なり2本鎖のRNA(dsRNA)を用いる。また、アンチセンスの場合は作用を打ち消したいm-RNAと同量のアンチセンスRNA(相補関係にあるRNA)が必要となるが、RNAiの場合は細胞あたり数コピー程度でよく、1分子のdsRNAで複数のm-RNAに対して作用するようなので効率的である。

SDS-PAGE

タンパクの表面をSDS化して荷電状態にしたうえで、ゲル電気泳動を行う。