音響光学効果について
03/12/8
はじめに
音響光学効果という面白い現象が知られている。これは結果的には、結晶を超音波で振動させると、超音波の周波数で格子定数が制御できる回折格子になる現象である。非常に面白い現象なので少し調査してみる
光弾性とは
音響光学効果の基礎になる光弾性とは、物質が応力により屈折率を変える現象である。
音響光学効果とは
結晶を超音波で振動させると、内部に周期的な応力の大小の構造ができる。光弾性を起こしやすい材料(異方性の高い結晶)であれば、この場合、屈折率の周期的な大小が起こる。ここに光を入射すると、屈折率グレーティングができる。
たとえば、溶融水晶の縦波の速度は約6000m/secである(理科年表)。これを、70MHzの超音波で励振すると、内部に定在波ができる。この場合の波長は、速度/周波数=86μm。つまり、溝本数11.6本/mmのグレーティングに相当する
音響光学効果による分光
グレーティングなので分光はできるが、音響光学素子(AOM)による分光は、格子定数が周波数で制御できる。これを利用して、入射光を一定の回折角でモニタする系を作ると、周波数が一定の場合は特定の波長の光を分光・モニタできるが、周波数をスキャンすることで波長スキャンができる。これを利用した赤外分光光度計も市販されている
音響光学効果によるスペクトラムアナライザ
逆に、入射光が単色光の場合はどうだろう? この場合は、振動周波数に対応する回折角に回折光が出てくる。ここで、振動波形に、複数の周波数が混合されたものを用いると、複数の回折角から同時に回折光が出てくる。つまり、各回折角でモニタしていれば、振動波形をスペクトル分析したことになる。これを利用したものに、電波望遠鏡の分光器がある。野辺山電波天文台の45mアンテナにこの装置が接続され、ミリ波をヘテロダインで超短波帯にダウンコンバートした波形で駆動されるAOMにHeNeレーザの光が入射されている。電波望遠鏡からの電波を分光することで、遠くの天体に含まれる物質のスペクトルが観測できる。