アナログシンセサイザの想い出
シンセサイザーとの出会い
アナログシンセサイザとの出会いは、冨田勲氏の「展覧会の絵」でしょうか。電子回路は音を忠実に伝えるためのものと思っていた私にとって、電子回路で新しい音が作れるというのは新鮮な驚きで、百科事典などで動作原理をしらべたり、「ラジオの製作」「トランジスタ技術」などの連載を見ながらモジュラーシステムを製作しました
当時製作したモジュラーシンセサイザー('79-'81)
メモリICとカウンタで作ったディジタルシーケンサ('79-'81)
東工大ロボット技術研究会とCAMPUS-1
大学のサークルで、仲間と、アナログポリフォニックシンセサイザの製作に挑戦しました。当時はMIDIの黎明期で、GS音源などない'85年頃には、MIDIのついたマルチティンバーのシンセサイザーはまだ世の中に珍しかったのではないでしょうか。
NEWCAMPUS-0について
習作CAMPUS-0(左)と開発システム(右)。'83年。MIDIはまだなかったですが、マルチティンバーでした
CAMPUS-1('85年)
CAMPUS-1について
白砂先生
東京芸術大学で「電子音楽概論」の講座が学部学生向けに開講されていたのでモグリに行きました(聴講制度がなかったので...もう時効でしょう)。
講師の白砂昭一先生は坂本龍一氏の恩師であり、シンセサイザーが珍しかった頃より、ご自分でMoogやBuchraなどを参考にされてモジュラーシンセサイザーを製作され、それを紹介した著書も出されています(オーム社、「ミュージックシンセサイザの製作」)。芸大の録音技師や聴音の入試もされていたとか
先生にはいろいろ貴重なお話をお聞きしました。
●モジュラーシンセサイザでいろいろやっているうちに、複数の発振器で互いに周波数変調をかけると、実にいろいろな音がすることがわかった。変調の深さや周波数関係、組み合わせ方によっても音が変わる。面白いので、発振器の組み合わせ方と、各発振器の設定(周波数と変調の深さを10段階の数値にしたもの)を数字で表し、すべての組み合わせを試し、その中で面白そうな音と、それを表現する数字を暗記するよう訓練されたそうです。電子楽器というと、イメージした音が簡単に出せるのが理想だと思っていた私には、目からうろこが落ちる思いでした
後に、この音源はヤマハからFM音源として発売されるのですが、「特許を取っとけば良かった」と後悔されていました
●講義の課題として、音楽製作がありました。「朝起きて、顔を洗って着替えて食事をして、電車に乗って学校に来て...と、一日に体験する音を表現してみなさい」という話だったと思います。残念ながら私は本業の方の大学がいそがしくなり課題は参加しませんでしたが、作曲というものに触れた瞬間だったような気がします
電子楽器に戻る